2021年9月4日~9月10日までの1週間、「日本テニス学会」の第33回学会大会が開催されています。
本来であれば一堂に会し、2日かかりで互いの研究発表を聞いたり、テニスや会食で懇親を深めたりするのですが、現在の情勢がこれを許しません。
今年は、あらかじめ研究発表者が動画でプレゼンテーションを会員に送付し、それを各自がオンラインで視聴する形式で開催されることとなりました。
大会の中で「⼤学テニス部の組織運営状況に関する調査:スポーツ団体ガバナンスコードを基にしたグッドガバナンスへの提⾔」と題し、研究発表を行いましたのでそれについて書きます。
1,日本テニス学会とは?
本題の前に、「日本テニス学会」って何?と思われた方も多かろうと思います。
日本テニス学会とは、テニスに関する様々な問題について、様々な分野の研究者が研究活動を行う学会です。
物理学、運動科学、その他いわゆる自然科学の範疇に属する研究が主ですが、人文科学や社会科学に属する分野も歓迎されています。
ウェブサイトはこちら。
法学の分野はもしかすると私が初めてかもしれませんが、数年前に学会員に登録して以来、大変歓迎していただいています。
2,今回の研究発表について
今回の研究発表は、大学テニス部の組織運営を題材にしたものでした。
発田志音さん(慶應義塾大学・筆頭研究者)、平田大輔先生(専修大学)、三橋大輔先生(筑波大学)との共同研究です。
また、研究にあたり、日本学連をはじめ様々な方々にご協力いただいたほか、多忙な競技活動の中全国各地の大学テニス部からアンケートのご回答をいただきました。
心より感謝申し上げます。
さて、本研究の問題意識は、大学部活動における組織運営についての疑問です。
大学によって異なるとは思いますが、大学部活動では一般に、部員による自治的組織運営が行われていると思います。
が、その統治が適正・透明に行われなければ、構成員である部員が快適に過ごせず、モチベーションなどにも影響し、ひいては部活動としての勢力低下に繋がりかねません。私も大学部活動に所属しており、学生時代に感じた組織運営への疑問、あるいは自身が幹部の時に行った組織運営の難しさも経験しています。
他方で、組織運営の適正さの要請は、もちろん部活動に限られるものではありません。
近時では、令和元年、中央競技団体を含むスポーツ団体の運営が適正に行われるための様々な統治の原則を盛り込んだ「スポーツ団体ガバナンスコード」が、スポーツ庁により制定されました。スポーツ団体の多くは、このガバナンスコードに対応するため、自身のガバナンスを見直す取り組みをしています。この作業には、必要な規則の制定など法の要素を多分に含むため、各スポーツ団体は弁護士などの法専門家の助けを借りながら整備に取り組んでいるところかと思います。私も、いくつかのスポーツ団体に関わり、規則の整備などに携わってきました。
このガバナンスコードが制定された背景には、スポーツ団体の運営の不透明さや不適切さなどがあり、これによって不祥事が起きたり、関係者の利益が損なわれたりするという問題がありました。法の視点で、こうした問題を解決していく必要があったということです。ここで私たちは、スポーツ団体ガバナンスコードの背景にあるスポーツ団体が抱えてきた問題点は、実は同じようにスポーツを基礎とした大学部活動にもあるのではないかという仮説を持ち、もしこれが正しいのであれば、ガバナンスコードを参考に、法の視点から、部活動の運営について何らかの提言ができるのではないかと考えました。
そこで、私たちは全国の大学庭球部にお願いして、部活動の適正な運営に関わる様々な質問を行うアンケートをさせていただきました。そのアンケート結果を参考にしながら、スポーツ団体ガバナンスコードの各原則、その背景にある考え方をあてはめ、大学部活動をより一層適切に運営するためのいくつかの提言をさせていただきました。
今後も弁護士業務の傍ら、こうした研究活動も積極的に行っていきたいです。