先日、スポーツ・アスリートに関わる現場の医師、歯科医師、薬剤師、看護師、PT、AT、栄養士、鍼灸師、柔整師、臨床心理士などで構成されるドーピング0会様で、「アンチ・ドーピングと弁護士の役割」と題する講演をさせていただきました。
「ドーピング0会」は、アンチ・ドーピングの知識を広め、スポーツ界のドーピング違反を0にすることを目的に活動している私的団体です。基本的には医療関係者ばかりなのですが、ひょんなことから代表の方と知り合い、私も参画させていただいております。
さて、もしかすると、読んでいただいている方の中には、
ドーピングの話題でなぜ弁護士?
と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
アンチ・ドーピングは、薬の処方や、サプリメント・食品の摂取など、主に医療関係者やトレーナー、食事管理などの専門家の役割なのではないかと。
しかし、何がドーピング違反で、違反するとどうなるのかは「法」が決めています。
「法」といっても必ずしも「法律」ではありません。世界アンチ・ドーピング機構の定める世界アンチ・ドーピング規程や、これをもとに作られる各国のドーピング機構の定めるアンチ・ドーピング規程、また国際競技団体(テニスで言えばITF)の定めるアンチ・ドーピング規程などに則り、ドーピング違反が定義され、そのサンクションが決まっているのです。
これは、日本法でいうと刑法の規律に似ています。「窃盗したら懲役何年」のように、「禁止物質が検出されたら資格停止4年」みたいになっているのです。
そして、ひとたびドーピング違反に問われてしまった場合、アスリートに対する聴聞会や、その後の仲裁手続などで処分を争う必要がある場合も多いです。その手続の代理人をするのは一般に弁護士です。
弁護士は、各種アンチ・ドーピング規程に定められた要件事実を意識し、証拠を収集し、主張立証を試みます。アンチ・ドーピング紛争は、スポーツに携わる弁護士にとっては、典型的な守備範囲なのです。
先日は、こうした役割を有する弁護士の立場から、アンチ・ドーピングにまつわる「法」の概要と、その手続における弁護士の役割を、具体的な裁判例などに言及しながら、お話しさせていただきました。
引用した裁判例はすべてテニスでした(笑)。私も勉強しながら知ったことなのですが、CAS(スポーツ仲裁裁判所)で扱われた過去のテニスの事例は、アンチ・ドーピングの裁判例において先例的価値のある判断となっているものがあるのです(テニスにドーピング違反が多いという意味じゃないですよ!念のため!)。
他職種との交流の機会、今後も大事にしていきたいです。