新型コロナウィルスと,スポーツイベント主催者の法的責任

新型コロナウィルス(COVID-19)の流行は,未だ予断を許さない状況です。
が,2カ月ほどの緊急事態宣言及び自粛期間の努力により,爆発的な感染はいったん収まったとの認識のもと,様々なスポーツイベントが再開されてきています。
感染拡大防止は重要ですが,個人的には,スポーツを含む経済活動をストップし続けることはできないし,人間社会の在り方としてもどうにか経済との調和を少しずつ模索していくべきなのだろうと考えています。

さて,そうはいっても,いきなり以前のように戻すことには多くのリスクがあることは確かです。
世界一位のノバク・ジョコビッチ選手が主催したエキシビジョン大会で多数の感染者が出て,クラスターのような状況になったのは記憶が新しいニュースです。
もちろん一番大きなリスクは参加者への感染拡大ですが,それに伴う法的リスクも無視できないリスクです。

イベントの主催者は,参加者,観客,その他関係者と一定の契約関係にありますが,当該契約に内在する規律として,イベントにおいて契約の相手方の安全を配慮する義務があると解釈される場合があります。
もしCOVID-19感染がイベントを原因として発生し,その感染拡大防止の対策が不十分であった場合,この安全配慮義務に違反したとして契約上の債務不履行に基づく損害賠償請求などの法的責任が生じる可能性があります。

ではどのくらい対策を取っていれば法的責任を免れるか,というと明確な基準は現在においてありません。
一応参考になるのは,
 公益財団法人日本スポーツ協会作成のガイドライン
です。
これは同協会が作成して公表されているもので,スポーツイベントにおける感染症対策について記載されています。
もっとも,このガイドラインを遵守していれば一律に免責になるものとは解されず,法的な義務違反が認められるか否かは個別具体的な事案に現れる事情にゆだねられているものと思われます。
新しい問題ですので,従来の裁判例などから基準を直ちに導け出せないことも,この問題の法的リスクを高めていると思います。

こうした請求には「大会のせいで感染して損害を負った」ことの証明の難しさや,訴訟提起にかかる費用などのハードルがありますが,主催者側としては,このような法的請求がありうること,つまり訴訟リスクをも検討したうえでイベント実施の適否,イベント実施の際の対策の在り方などを考える必要があります。


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