弁護士 山本衛 On Court

ATP公式ルールブック翻訳

 業務での調査で,ATP公式ルールブックに行き当たる機会がありました。
  https://www.atptour.com/en/corporate/rulebook
 ルールブックというと,ATPが主催するトーナメントのレギュレーションやランキングシステムなどについて解説しているようなイメージを持ちます。もちろんそれはそれで書いてあるのですが,各ステークホルダーの権利などについても言及されており,その部分はさながら法律的な権利義務を定めた規約のような規定ぶりです。
 そこで,権利義務に関する法的事項の部分を中心に,少しずつ翻訳をしてみることにしました。
 いろいろ調べて行き当たる限りでは,こうした翻訳は,少なくともインターネット等で公開されているものはないように見えました。一般の方々の何の役に立つかはわかりませんが,少しずつやっていこうと思います。
 なお,当職は法律については専門家としての知識を,テニスについては相応の知識を有していますが,外国法については限定された知識しか有しておりませんし,英語能力に関しても信頼の限りではありませんので,あくまで参考程度で見てもらえれば幸いです。それでも,法律とテニスの知識を活かして,なるべく日本の法律家やテニス関係者の方にわかりやすいように翻訳していくつもりです。

 本日は,肖像権とパブリシティ権その他広告宣伝に関する規程です。

ATPオフィシャルルールブック2019年版

1.13 Waiver/Player Publicity and Promotion
 権利の放棄(選手のパブリシティ及び広告宣伝)

All players agree to the following:
 すべてのプレーヤーは,以下の各項を承諾する。

A.I grant and assign to ATP and ATP Tour tournaments and ATP Challenger Tour tournaments in which I am or have been entered the right in perpetuity to record in tangible form and use my name, performance, likeness, voice, and biography, in any and all media (including the right to produce, display and otherwise use motion pictures, still pictures and live, taped or filmed television and other reproductions of me),solely for purposes of advertising and promoting ATP Tour, ATP Tour tournaments,ATP Challenger Tour tournaments and other events held as part of ATP.
 A.私は,ATP,および私が参加し又は私が参加したATPツアートーナメント,ATPチャレンジャーツアートーナメントに対し,永久に,あらゆるメディアにおいて,専らATPツアートーナメント,ATPチャレンジャーツアートーナメント,その他ATPの一部として開催されるイベントの広報を行う目的での,有形の記録を行う権利及び氏名,パフォーマンス,肖像,声並びに私自身の情報について利用する権利(私に関する映画,静止画,ライブ又は録画された映像,およびその他の複製物について制作,表示,その他の使用する権利を含む)の一切の使用を許し,譲渡する。
 Any such use of my name, performance, likeness, voice or biography shall be without separate compensation to me or to my heirs, devisees, executors, administrators, legal representatives or assignees.
 かかる氏名,パフォーマンス,肖像,声並びに私自身の情報についての利用は,私及び私の相続人,受遺者,執行者,法定代理人,及び権利の譲受人に対する個別の補償なしに行われる。
 Nothing in this section shall permit ATP, or ATP Tour tournaments and ATP Challenger Tour tournaments to use my name, performance, likeness, voice or biography on any product, service or clothing, or in any manner that constitutes an endorsement of any product, service or company.
 本項は,製品やサービスや企業の宣伝を構成する製品,サービス,衣服その他の手段での,氏名,パフォーマンス,肖像,声並びに私自身の情報についての利用を,ATP,ATPツアー,ATPチャレンジャーツアーに許可するものではない。

B.I agree to cooperate with the news media and to participate upon request in reasonable promotional activities of ATP and ATP Tour tournaments and events in which I am entered, subject to my reasonable availability to participate therein.
 私は,合理的に参加できる範囲において,私の出場するATP,ATPツアー等のイベントにおける合理的な広告的行為について,リクエストに応じてこれに参加し,ニュースメディアに協力することに合意する。
 My participation in any such promotional activities or other events shall not be represented to third parties as an endorsement by me of any product or company.
 そのような広告的行為への私の参加は,私による何らかの製品や企業の宣伝としての表示を第三者に対して行うものではない。

C.Any use of my name, likeness, signature, photograph, depiction or video (my “Likeness”) on official ATP or ATP Tour branded merchandise (the “ATP Merchandise”)shall be subject to my prior written approval.
 C.ATP,ATPツアーの公式商品(以下,「ATP商品」という)における私の氏名,肖像,サイン,写真,映像の描写(以下,単に「肖像等」という)の利用は,私の書面による事前の承認によるものとする。
I agree that my response to any request for my approval will not be unreasonably delayed.
 私は,承認を求める要求に対する応答を,不当に遅滞しない。
With my prior written approval as to the items of ATP Merchandise, the use of my Likeness and the compensation for this use, I grant and assign to ATP the right to use my Likeness on ATP or ATP Tour Merchandise, provided that use of my Likeness on any such merchandise shall not conflict with or cause me to be in breach of any current endorsement contract to which I am bound.
 ATP商品に関する私の事前の承認においては,私の肖像等の利用およびこの利用に対する補償について,私は,私の肖像等をATPおよびATP商品で利用する権利を付与することを承諾し,これらの商品における肖像等の利用が,現在において私が拘束されている支援契約と抵触又は違反するものではないことをATPに対して承認する。
In the event ATP desires to use my Likeness on ATP or ATP Tour Merchandise, I acknowledge that I will receive a commission amount agreed upon in writing on any proceeds or revenue generated from such use.
 ATPが私の肖像等をATP商品で利用しようとする場合において,私は,かかる利用から生じた売上または収入に関して書面で合意されたコミッション料を受け取ることができることを確認する。

 最後に雑感です。
 肖像権およびパブリシティ権の概念は,その権利の性質,譲渡・利用許諾の可否などについて日本法でも議論のあるところです。このあたりはまた機会があれば紹介したいところですが,テニスの統括団体の立場で最も気になるのは個々のプレーヤーのスポンサーとの関係でしょう。この規定は,パブリシティ利用の要件を限定したり,スポンサーによる企業広告との関係も明示的に規定することで,あらかじめその調整を図ろうとしているように感じられます。

URL :
TRACKBACK URL :
Return Top