ゴールデンウィークなどもあり更新が1カ月ぶりとなりました。
今日は,テニススクールの練習中の事故に関する事例を紹介します。球拾い中に起こった事故の事例です(横浜地判昭和58年8月24日判時1091号120頁)。
【事案の概要】
本件の原告は,初級者クラスに在籍するテニススクールの生徒でした。当該レッスンでは,コーチが球出しを行い,ベースラインに立った生徒2名がバックハンドを打つという基本的な練習をしていました。ただこの時,コーチは残りの生徒に対し,球出しのボールが途切れないようにボール拾いを指示していました。
すると,バックハンドの練習をしていた受講生一人の打ったボールが球拾いをしている受講生の目に当たり,大けがをしてしまいました。
けがをした受講生は,スクールの経営会社に対し,損害賠償の請求を行いました。
【裁判所の判断】
裁判所は,次のように判示して,原告の請求を認めました。
(当該コーチは)テニススクールのコーチとして,受講者の生命・身体を損うことのないようにその受講者の資質,能力,受講目的に応じた適切な手段,方法で指導をなすべき注意義務があるところ,これを怠り,主婦で初心者の原告に対し,練習者の近くでボール拾いをすることの危険性やその危険防止について何の指導もしないまま,ボールが衝突する危険のある状況でのボール拾いを指示してこれをさせ,その結果傷害を負わせるに至ったものと認められるから,使用者である被告は,民法715条に基づき,傷害によって被った原告の損害を賠償すべき義務がある。