昨日は、第一東京弁護士会の「スポーツ法研究部会」に出席してきました。
話題は、主にスポーツに関連する不祥事と処分についてでした。
スポーツに関わる人が不祥事を起こした場合、当該スポーツの競技団体等から処分されるということがあります。
不祥事には、暴力・セクハラ・パワハラなどの問題、スポーツ事故の責任問題、ドーピングの問題、スポーツとは直接関係なく問題行動や刑事事件を起こしたなどの問題など、幅広いものがあります。
日本のテニス界では、国内の有名選手が八百長に関わったとしてTIU(テニス・インテグリティ・ユニット。テニスにおける腐敗行為を世界的に監視する団体)から処分を受けた例や、車いすテニスの選手が建造物侵入容疑で逮捕され、日本車いすテニス協会から処分を受けた例が記憶に新しいところです。
もちろん、不祥事があったときに何らかの処分がなされる仕組みは必要なことですね。
こうした不祥事に対する処分で、法的な観点から問題になる事項の一つが、処分の手続がきちんととられているかという点です。
たとえば、
・競技団体等の規程にのっとった処分がなされているか
・処分の対象者が十分に弁明できる機会が設けられているか
・不利益処分の原因となる事実が証拠に基づいて認定されているか
というような問題です。実際、こうした手続が守られていないケースでは、JSAA(日本スポーツ仲裁機構)、あるいは(処分の内容によっては)裁判所等の判断により処分が取り消される可能性も考えられます。
特に、私のように刑事事件を取り扱う法律家は、こうした問題に敏感です。
不確かな根拠に基づいて不利益な処分がなされるような仕組みであれば、刑事事件でいう「冤罪」が起こってしまうこともありえるからです。
そして、除名や出場停止などの処分がなされれば、アスリートの選手活動に対して重大な結果を生じさせます。
十分に対象者の話を聞いたうえで、証拠に基づいて事実を認定し、各種規程にのっとった処分をするような仕組みが必要です。きちんとこうした手続がなされるような仕組みを整えたり、あるいは手続の中で処分の対象者の権利利益を守るために活動したりと、法律家がかかわる余地は十分にあるように思われます。