弁護士 山本衛 On Court

テニス関係裁判例紹介「修繕されないクラブハウス」

 土地や建物を賃借してテニススクールを経営することはよくあることです。
 今日紹介するのは,テニススクールに用いるクラブハウスの賃貸借においての貸主とのトラブルの事例です。
 東京地判平成18年3月17日(LLI/DB判例秘書登載L06130287) 

【事案の概要】
 本件の原告は,建物の貸主です。
 被告はテニススクールの経営者であり,建物をテニスクラブのために借りていた借主でした。
 原告は,被告が建物の賃料支払いを数か月間怠るなど契約上必要な金員を支払わなかったため,賃貸借契約を解除すると主張して建物の明け渡しと未払い賃料の支払いを求めて訴えを起こしました。
 これに対して被告は,被告の経営が悪化して賃料が払えなくなったのは,貸主が施設内の壊れたボイラーの修理を原告が行わずシャワールームが使えなかったためであって,その貸主が解除を主張するのは信義に反すると反論しました。
【裁判所の判断】
 裁判所は,ボイラーが故障してシャワールームが使えなかったという事実があったことについては一部被告の主張に理解を示しましたが,仮にそれが一つの原因であるとしても,被告の経営の悪化は近くに大規模スポーツ施設ができたことで顧客が流れたことが主な要因であると認定して,解除が信義に反するとの被告の主張を認めませんでした。

 賃料を支払わない借主に対しては貸主が契約解除できることが原則で,「信義に反する」との主張が認められるような場合は稀であろうと思います。この事例の事実関係を見ても,裁判の結論自体は,やむを得ない面があるかもしれません。
 しかし,この裁判の結論はともかく,貸主が必要な設備を整えないことには大きな問題があります。
 貸主には,借主が土地や建物などを使用し,収益するために必要な修繕を行う義務があります。もし賃貸人がこの義務を果たさずに借主が使用収益するのに困難な状態を放置したような場合には,借主は,それによって生じた損害賠償の請求ができます。あるいは,賃料の減額も請求できます。また,借主のほうで修繕し,その費用を請求(賃料と相殺)することもできます。そもそも,不誠実な貸主との契約を借主側から終了して退去するという選択も考えられるところです。そして,この裁判でもそうであったように,貸主と借主との無用なトラブルを招くことになります。
 貸主からすると,不動産の修繕はある程度まとまった出費が伴うことですので,積極的に応じたくはないと思う場合もあるのかもしれません。しかし,特に事業用の不動産の場合,貸主が不動産をきれいに整えることは借主の事業を成功させる要因の一つになるでしょう。それによって貸主側も安定した家賃収入が見込まれることになるはずで,本来はお互いのためになることと考えられるはずです。法的な権利義務を離れても,互いのためにこうした修繕のやりとりがスムーズにいく関係が望ましいですね。
 ちなみに,どうでもいいですが,私は非常に汗かきなのでテニスクラブにはシャワールームが必要不可欠だと考えています(笑)
 

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