弁護士 山本衛 On Court

冤罪

当サイトをいつもご覧の皆様,明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて,新年初の投稿ということで,初心に返るというわけではないですが,昔の話をしたいと思います。
話自体は,とてもくだらない話です。

僕が小学生くらいの時でしょうか。
僕は袋入りのお菓子を持っていました。
小さな袋に入ったそのお菓子を,僕は食べていました。
お菓子の量も少なくなってきました。
僕は,残りのお菓子を食べてしまおうと,袋に口をつけて上を向きました。
お菓子を一気に口に流し込もうとしました。
その瞬間でした。
家族の一人が,僕に向かって「弟の分も残しておきなさい」と言ってきました。
しかし,その言葉が聞こえた瞬間には,もう袋の中のお菓子は僕の口に流れているところでした。
とっさに袋を口から離しましたが,お菓子はすべて口に入ってしまいました。
それ自体は,弟に申し訳ないと思いました。
しかし悲劇はその先にありました。
僕に残しておきなさいと言った家族が,
「残しておきなさいと言われたから,独り占めするためにお菓子を全部口に入れた」
という主張をしてきたのです。
争点は,「残しておきなさい」という発言と,お菓子を口に流し込んだ事実の先後関係です。
僕は,必死で,聞こえる前に食べてしまったんだと訴えました。
しかし,聞いてもらえませんでした。
泣きながら,自分は無実だと(いう言葉遣いはしてませんが)主張しました。
しかし,受け入れられませんでした。
僕は,弟に取られないようにお菓子を独り占めしたバカ兄貴ということになってしまいました。
僕は当事者ですから,真実を知っています。
この事件は冤罪です。
それ以来,僕は,証拠もないのに何かを決めつけることについて,大きな嫌悪感を抱くようになりました。

はい,くだらない話ですね・・・
でも,僕がいま弁護士として活動をする中で「やっていない」という依頼人の悲痛な訴えを聞くとき,このエピソードが頭をよぎることがあります。
もしかしたら,弁護士として今やっていることの根底に,このエピソードの経験があるかもしれません。
刑事事件は,過去の事実があったかなかったかを判断します。ですから,明確な証拠が無い場合も多く,断片的な証拠や,人の証言によって事実があったかなかったかを判断するのです。
そして,時に,僕の嫌悪する「決めつけ」が起こります。
決めつけによって,犯罪者とされてしまったり,刑務所に行かなければならなかったり,場合によっては死ななければならなかったりするようなことがあれば,それはくだらない話ではとても済まされません。
こういう悲劇が起こらないよう,誰もが,当事者の話に真摯に耳を傾けなければいけないと思います。捜査機関や裁判官,もちろん弁護人もです。

普段の弁護活動であれば,依頼人の話を聞くことを怠ることはありません。
それと同じで,僕が将来父親になったりすることがあったら,感情的にならずに,きちんと子どもの言い分にも耳を傾けてあげようと思います。できるか不安ですが・・・(笑)

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